いつもの君の、香り。






「……どうしたの?」

あたしの前に積まれた段ボール。
そこに本を詰めているのは――…

「ああ、おはよう。いや、ちょっとね、身の回りを整頓しようかと……」


「嘘」


あたし、知ってる。
君は嘘をつく時、頭の後ろをポリポリ、って掻くんだ。


「引っ越すの?」
「うーん……」


そうしたら君は頭の後ろをポリポリ、って掻くんだ。


今あたしは、悲しいのかな。

泣きたいのかな。

でもさ。


「いってらっしゃい」




あたしは強がりなの。
きっと君も知っているのね。

だから、笑ってくれたのよね?





それからあたしは段ボール箱を飛び越えて行き慣れた冷蔵庫の中を覗いた。

(珍しいなー、ヨーグルト買ってるなんて)


失くしてしまおう。
いらない悲しさも、切なさも、この想いさえ。




いつもとは違う、君のじゃない、ヨーグルトの香りに包まれて、