「なんなのかなあ」 「なんなんだろねえ」 あたしの呟きにのんびり答えながら彼は ガムシロップをいくつも入れたアイスティをストローですすった。 ずずず、と水音がやけに響く。 喫茶店はなぜかひとけがなくて、驚くほど静かだ。 あたしは彼の濡れたアイスティのグラスを見ながら言った。 「そんな甘いの飲んでたら糖尿病になるよ」 ぼやいても、「大丈夫だよ」とだけ言って、彼はまたストローをくわえる。 (どんな根拠があってそう言うんだろう。) 「やっぱあれかな、あたしはダメなのかな」 「そうかもねえ」 あたしはむっとして彼を睨む。 彼はぷらぷら足を揺らしていて、退屈そうにみえる。 ずず、・・ず、 「あのひとは何を考えながら浮気するのかな」 「さあね」 「あなたはしたことある?」 「どうだろう」 「・・・・」 そりゃね、あたしの恋愛相談をきくことなんて、 彼にはこれっぽっちも利益にならないことだけれどね、 ましてそれが彼氏の浮気のことだったり、だったり、したら もしあたしが彼に彼女の話をされたとしても、 同じようにマジメに聞いたりしないと思う。 彼はやはり退屈そうにぷらぷらと足を揺らし、アイスティをすする。 零れたしずくで濡れたくちびるを舌でぬぐった。 (やけに色っぽい) 「・・・もう少し真面目に反応してよ、親友が悩んでるんだよ」 「ホントに悩んでる?」 「は、え?いやまあそうだから相談してるんだけどね」 「だってきみ、どうでもよさそうな顔してるよ」 「デフォルトの表情です、それは」 「じゃあもともとやる気がないんじゃない」 「・・・・それ、なにかいろいろとダメでしょう」 「うん、ダメだね、ドンマイ」 「励まされてる気がしないんですけど」 彼は少しだけ笑ってみせた。退屈だねと。 あたしは彼の言葉の真意をはかりきれずに首を傾げた。 どっちにしたって退屈なんじゃないの。 彼はこっちを見ることさえしない。 たぶん、あたしが本当に悩んでいようがいなかろうが、関係ないんだろうな。 (実際それほど悩んでるわけでもないのだけど。) 「あくまで聞くつもりはないのね」 そう言うと、彼はぷらぷらをやめた。 「だって、好きな子の恋愛相談なんて、真面目に聞けるわけないでしょ」 それともきみは、僕に君の彼氏をぶっ飛ばせって言いたいのかな。 氷をグラスの中でからんと鳴らす。 あたしは舌の先でくちびるを湿らせた。 (そうかもしれない、) 夏のとある日、喫茶店にて。