窓を閉め切ってしまえば、夏と秋に違いは見受けられない。夕焼けの名残惜しそうな日差しが注ぎ込んでくる。
部屋の空気は、時間が止まってしまったように動かない。

私は止まった時間の中、壁に寄りかかって雑誌をめくっていた。隣には、友人の姿。
静寂に支配されたオレンジ色に包まれ、すぅすぅと寝息が聞こえてくる。
「…こいつは……」
何をしに来たのか。
毎回毎回、何処か沈んだ表情をしてふらりと押しかけてきては他愛ない話をして、いつの間にか丸くなって寝ているのだ。
まったく、迷惑な奴である。
羽毛布団を持ってきてかけてやる。こうすれば、そのうち暑くなって起きるだろう。

***

「、、、あつい、」
「おはよう、って言ってももう7時過ぎだよ?」
すぐ起きるだろうという私の期待は大きく外れ、もうとっぷり日も落ちて気温もぐんと下がっていた。
締め切った室内は、気だるく淀んだ空気が流れている。
「空気淀んでるから窓開けるよ」
「んー…」
窓を開けると、どこかの夕飯であろう、美味しそうなカレーのにおいが流れ込んできた。少し、焼き魚のにおいも。
「、寒い」
「知らん。
ご飯食べてくでしょ?」
「んー…じゃあ、いただく」


「ごめんな、」
台所で味噌汁をよそっていると、背後から声がかかった。
「何が?」
「毎回いきなり押しかけて来て」
「ああ、いいよ別に。慣れたし。何かあったから来るんでしょ?」
「…まあ。」
一瞬、『なんで分かるんだ』という顔をした。来た時と帰る時の表情の違いに、気付いていないとでも思っているんだろうか。
「別に気にしてないから、いつでもおいでよ。毛布用意して待ってるから。」
何があったのかはしらない。だけど、私のところに来て、少しでも沈んだ表情が取り払われるのなら、それは私にとって幸せと呼べることだ。

「   」
ガシャッ

彼が何かを言ったのと、私が派手にフライパンを落としたのは同時だった。
「今、何か言った?」
「いや、何も。」



それから、彼は以前より頻繁に来るようになった。





明るい顔をして。