「ごめん、待った!?」 「遅ぇよ、缶ジュース一本な。」 「ええー!!?」 10分遅れただけなのに、と拓也が言うと、晃はふんと鼻で笑った。 「10分も、だよ。寒かったんだからな。」 確かに12月下頃、クリスマスの雰囲気も抜けていないこの時期に、1人で待つのはかなりつらかっただろう。 「うー、悪い。じゃあ、途中でコンビニよってくか。」 「おぅ。」 ゆっくりと歩き出したときに、拓也はちらりと晃を盗み見た。 「…何?」 「いや、本当に寒かったんだなって。手とかすごい寒そう。」 赤くなっている頬を、マフラーに埋めるようにして、歩く姿は、見るだけで風の冷たさを感じるようだった。 「まぁま。でも、お前も寒そうだから。ほら、もっと深く帽子かぶれよ。」 ぐい、と目にかかりそうな程下げられた帽子を、拓也は直そうと手を伸ばした。 「何すんだよッ」 「いいじゃん。似合ってんぜ。」 へらへらと笑う晃を見て、むすっと頬を膨らませるが、全く意味がない。 「あ、あのコンビニ寄ってこうよ。」 「そうだな。」 自動ドアをくぐると、店内のあたたかい空気が肌に触れて、心地よかった。 早速飲み物のコーナーへと向かう晃の後を、拓也は横の棚にあったチョコレートを持って追いかける。 「拓也ぁ、俺、これがいい。…お前またチョコ買うのかよ。」 「悪いか!晃には関係ないじゃん!」 「あっはは。じゃ、これよろしくー。」 そう言って拓也を1人でレジの方へと向かわせる晃は、まるで小さな悪魔のよう。 「ストローお付けしますか?」 「2つお願いします。」 拓也はひとくちもらってやろうと、ストローを1つ多く貰った。 「おまたせー。はい。」 「さんきゅ。」 ごつくて背の高い高校男児が、パックの桃ジュースをストローで吸う姿はなかなかこっけいだ。 「なあ、ひとくち頂戴?」 「えー?」 「ほら、ストローもう1つもらってきたからさ。」 「いいよ、めんどくさい。このままいけ。」 ほら、と渡されたパックは、やっぱり冬場に外で飲むのには少し冷たすぎた。 「冷たッ!?てか本当にいいの?」 「いいよ。早く。俺も飲みたいの。」 「えへへ、じゃあひとくちだけ。」 いただきます、と遠慮がちにストローに口を付けた拓也は、ふわっと広がる桃の香りに、思わず笑みをこぼした。 「これ、超うまいね。また今度買いに来よっかなー。」 はい、とジュースを手渡して、後味を楽しむ。 「俺もこれ気に入ったから、一緒に買いに来ようぜ」 「そうだねー。」 拓也がちらりと晃を盗み見ると、その表情はとてもやわらかく、拓也はなんだか嬉しくなって、晃の手をそっと握った。 「…何だよ?」 「別に?」 ふふっと笑った拓也は、ぎゅっと手を強く握りなおした。すると、晃は無言で強く握り返した。 びっくりして拓也が晃の事を見ると、その顔は何事もなかったかのように平然とストローをくわえていた。