"未来堂"

活気ある商店街の一角、埋もれるようにして、
その店はひっそりと立っていた。

『未来堂』

少年は立ち止まり、一言呟く。
「すずしそー…」
そしてそのまま、引き込まれるようにして店の中へ入っていった。

カランカラン

外観のイメ−ジと同じ、古風なドアベルが音を鳴らす。
が、店員が出てくる気配はない。
店の中は冷たい空気が流れ、そこだけまるで異世界のよう。

「古本屋だったのか…」
少年は奥へと進む。間口が狭い分、奥行きがあるようだ。
天井まで高く、所狭しと並べられた本は、しかしきれいに整頓されていた。

奥へ、奥へ。

やがて最奥へとたどりつく。
そこにいたのは、少年と同じか、少し年上とおもわれる少女。

「お待ちしておりました。」
「え?」
「私は、仲介者です。本と、それに呼ばれた者を繋ぐ役目を持っています。」
ふわりと笑い、本棚から一冊の本を取り出す。
「確かにお渡ししました。」

二十一世紀ももうすぐ終わろうというこの時代に、何を言っているんだ?
そう少年は言おうとしたが、開いた口は音を成さず、閉じた。
少女は人差し指を自分の口にあて、少年を制す。
「本は、あなたを読んでいるのです。」

辺りの冷ややかな空気が消えていく。音もなく店は消え去り、少年は呆然とその場に立ちすくんでいた。
「幻……?」
少年のその考えは、一瞬にして崩れ去った。

少年の手に握られた、一冊の本。

『未来堂』