もうすぐ冬休みが終わる一月の初め、俺は家でだらだらしていた。宿題も済ませ、予備校も無い。
おまけに家は俺1人で、静かすぎる昼下がり。テレビも観飽きた。さて、どうしようか…畳に大の字になった時、
「あなた、暇?」
小さく、だが威圧感のある声がした。けれど、どこから声がしたか分からない。
「ほら、目の前に居るじゃない」
んっ?焦点をずらしてみると…
「…はあ?」
「気付いたかしら。どうも、始めまして、妖精です。いっても、あなたの手助けをしたりはしないけど。」
え゛っ? マジで小さいし。これ、本物?ってか、妖精にしてはオバサンぽい気が…an・a○に載ってそうな服…
「ちょっと!触らないで!」
「…三次元だ…」
「当たり前でしょ!今日1日ここに泊まるから、よろしく」
「  何で?」
「あなた暇そうだから」
質問に答えた…もしかしたら、ロボットなのかも…俺、これで遊びたい!
コントローラ無いかな…
「ねえ、話聞いてた?何探してるの?」
「コントローラを…どこの商品なんです?あの、操縦者の方、隠れてないで出て来て下さい!
僕にも貸して下さい!」
「私のこと、ロボットだと思ってるの?違うわよ!?正真正銘の妖精よ!」
「またまた、あんまりからかわないで下さいよ。ほら、早く出て来て下さ〜い」
俺の声は静かな家にすーっと吸い込まれていた。
「あ゛ー の゛ー ね゛ー、本物の妖精なの!フェアリーよフェアリー、でも、多くの人間が思っているように何でも願いを叶えたり、手助けしたりはしないってこと。分かった?」
「何で?」
「急におとなしくなったわね。私は今、有給休暇をとって世界各地を旅してたの。で、今日がその最終日なんです。最後くらいのんびり静かで、田舎っぽくて庶民的なところで過ごすのも良いかってことでお邪魔した訳。1日だけだけど、よろしくお願いしまーす。」
「お断りします。」
「迷惑かけないから。ご飯とお風呂とベッドだけを用意してくれればいいのよ。あっ、テレビもお願いv」
「ものっそい迷惑です。」
年上の女の人って苦手なんだよ。
「えー暇人同士仲良くしよ?1日お姉さん体験だよ、しかも無料!ってか、疲れたからもう今日は動く気ないし」
「あの、俺、なんか面倒くさいことになってるっぽいんで、関わらないで下さい。もうどうでもいいんで好きにしてください」
あ゛ー会話するのもたるいなー
「もう、かわいくないのね。素直に泊まって下さいって言えばいいのに。」
「できれば失せてもらえると嬉しいです」
「いいわよ、好きにするから」




「ねえ、せっかくめぐり合ったんだからお話しでもしま
「結構です。」
「いいじゃん。“ヒマ”なんだし」
推定年齢32歳に似合わぬふくれ面。
「う〜〜〜〜〜、“ヒマ”“ヒマ”言いますけどね、有意義な時間の過ごし方ってもんがあるんすよ。」
「そんなにごろごろしてるのに?口を動かすくらい良いでしょ?」
「・・・妖精の世界ってどんなもんなんです?」
「うーんとね、この世界とあまり変わらないわ。私も、普段は仕事してるの。さっき人助けをしないって言ったのは疲れるから。また明日から週5日働かなければならないわ。質の良い人助けをすればランクが上がるの。でも、毎月最低何人ってのが決まってて…まるでサラリーマンの営業みたいでしょ?妖精関係も複雑で……これでもエリートの方なんだけど、全然華々しくないの。はあ、聞いてくれてありがと」
「よく、そんな噛まずにしゃべれますね、それだけすらすら言葉が出てくるんだったら巧みに人を騙す事だって可能なんじゃ
パシッ!! 俺はスリッパで叩かれた。
「いったあ…今舌噛みましたよ」
「無駄口たたくからよ。いいじゃない、気持ちのいい音が出てたし。ほら、“オイシイ”ってやつよ。」
「漫才してるんじゃないんです。ゆったりと過ごすんじゃなかったんですか?」
「そうよ、そう、私こそこんな無駄話してる場合じゃないのよ。優雅な休日を過ごさなきゃ!」
「おいおいおしゃべりしようって言ったのはどっちです…」
 ブーブー  妖精もケータイ持ってるんだ。
「あ゛ー誰だよもうこんなときに! ったく人が休んでんのに…はあっ?課長からって…
ありえねー」
 えっと…キャラが変わった。
「急だけど、仕事入ったから帰るわ。んじゃお邪魔しましたー」

…夢か?いや、俺が手に持っているこれは、さっき妖精が俺の頭を叩くときに使ったものに違いない。
おまけに俺の舌が少し腫れている。いや、もし現実だったとして、あいつ本当に妖精?
全然かわいくないし老けてるし上から物を言うし……ま、ちょっとは暇つぶしになったからいいか。
妖精さん、人助けしてくれてありがとう。