「さむ…」 
 はずしていたジャケットのボタンを止めて、今日の朝にスカートを選んだ自分を恨む。 
 ふと、温かいものが欲しくなって、私は自動販売機を探しはじめた。 

 
 
 かじかんだ手を無理矢理動かし、自動販売機に小銭をねじこむ。 
 何段かに分かれてズラリと並んだボタンのうちの下の方の段のものだけが青く光った。 
 私はコーンスープのところのボタンを押した。 
 ホットココアはなく、オレンジ色のキャップのミルクティーの下には赤い文字が光っていたから、妥協。 
 ガコンという、缶が落ちてくる音が誰もいない夜の道にいやに響いた。 
 その時、新たに赤く『売り切れ』の文字が灯ったことに私は気付かなかった。 
 
 
  
 コーンスープの缶はすぐに空っぽになった。 
 この味とこの量で120円は無いだろうと思う。 
 
 
 私はしばらくの間、缶に残っていた僅かな熱で手のひらを出来る限り暖めていたが、缶が冷えてしまうと、 
 
 
 私は捨てても音が鳴らない植え込みのなかに、 
 
 
 
 その空き缶をなんの迷いもなく投げ捨てた。 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 女は、いつかの誰かが触れた唇を独り撫ぜ、 
 再び自動販売機を探しはじめた。 
 
 
 

 
 
 
 
 
きっとみつからない。
  (僕らが自分達の愚かさに気付くまで。)