紅く染まった手。 だんだんと、ゆっくり襲ってくる痛み。 見上げた空から、落ちてくる雪が、どうしてか、今日に限って、 とても美しく見えた。 「痛いよ… お兄ちゃん、助けて…?」 目の前を這っている子供。 地面に広がる血。 ぐちゃりと紅くぬれた服に、とけた雪がさらにしみこんでいく。 「ねぇ…助けて?」 下から真っすぐに見上げてくる茶色い瞳。 皮膚がすりむけてむき出しになった肉。 くちびるからしたたり落ちる真っ赤な血。 「う、 わ あ あ゛ あ あ゛ ぁ ぁ あ゛ あ」 気が付くと、昨晩自分が寝た部屋の天井が一番に目に入った。 汗でシャツがまとわりついて、気持ち悪い。 「・・・智志?」 「だいじょうぶ?だいぶうなされてたみたいだったよ?」 「あぁ、平気だよ。」 おれは、ぬいあとだらけの自分の身体を、その辺にああったタオルでふいた。 「ごめんな」 「何が?」 「身体。」 「あぁ…何だよ、突然。もう謝んなくていいって言ったじゃん。」 ガラスの眼球で見つめられた。 そっと触れたほほからは、無機質な冷たい感触。 「ごめんな、本当にごめんな。」 「…ぼくがもっと強かったから、こんなことにはならなかったのかな?」 「仕方ないよ、あの時、お前はまだ10才だった。」 「でもっ…」 「おれが全部、悪いんだよ。」 流れるはずもない、涙を、ふいてやった。 それから、あの時から全く変わっていない君を、ふわりとなでた。 「ありがとう。」 君は、たんぽぽのようにほほえんだ。 おれはその時、気が付いた。 やっぱり神様なんて、いないんだ、と。