ピピッ シャラーン♪
 
 
 
 コーンスープの缶のコーンをどうにか全部食べようと躍起になって缶の底を叩いていた僕の横で安っぽい電子音が鳴った。

「なにやってんの?」

「んー?……写メー」

視線は画面と何処か遠くの前方をいったりきたりしている。
写真の出来を見ているんだろう。

「写メってなにを?」

 ピピッ シャラーン♪

撮られた。

「私の世界のカケラたち」

柵に寄りかかって笑うその顔はいつにも増して儚げだった。


「ほら!みて!」

腕を突き出して、携帯の画面を見せてくる。

「鉄塔?」

「うん。で、感想は?」

「感想って……鉄塔だなぁ…とか?」

「うわっ!感受性無さすぎ!」

イーッと歯を剥き出して威嚇してきた。
お母さん、僕の彼女はショッカーか猿のようです。

「じゃあ、そっちはどう思うのさ」

「んー…なんかこうして見ると、ただの針金に見えない?」

「そりゃ遠くから見てるし、鉄だし…」

「まだそんな感受性の無いこと言うか!」

「いやでも…」

「あのね、」

遮られた。というか、無視された。

「針金みたいでしょ?グニャって曲がってポキッて折れちゃう」

「うん」

「でも、これはやっぱり鉄塔なの。曲がって折れちゃったりしたらたくさんの人の生活が成り立たなくなる。」

「うん」

「…とっても大事なものなのに、くだらないゴミみたいに見えちゃう」

「そう思ったら悲しくならない?」


「……そういうことよくわかんないけどさ…」

「うん?」

「それって、逆さまにしたら、くだらないゴミみたいなものでも、実は大事な役割を持って存在してるってことにはならない?」

「…」

「…」

「…」

「…」
なにかまずいことでも言っただろうか。
気まずい。


 
「ん!」

彼女はいきなり近づいて来たかと思うと、僕が手に持っていたコーンスープの缶を取りあげた。
そんでもって、

「えい」

「あ」

ポイ捨てした。
シンガポールだったら警察沙汰だ。

「…なにやってんの?」

「んー?どうでもいいじゃん」

「いやいやいや…ダメでしょ…」

 ピピッ シャラーン♪


 …また、撮られた。

「…なに、撮ってんの?」
 
 
「私の世界」