ここはデパートの屋上、手前のビルには鉄塔。今は昼休みで、つかの間の休息を俺は何故かいつも、同期のこいつと過ごしている。 俺たちはフェンスに身体を預けてだらんとしていた。

「ねえ」
唐突にこいつがしゃべり出す。
「俺、あれ登りたい」
目の前の鉄塔を指している。
「登れるなら登ったらいい。死ぬと思うけど」
「登りたい」
「登れば?」
「スーツ汚れる」
「諦めろ」
無茶なことを言い出すのはいつものこと。まるで子供だ。
「広樹、登ってきて」
「無理」
「ケチ」
「ケチで結構」
「……」
「……」
そこで会話が途切れた。別に、必要ないから構わない。
「……俺さ、」
またこいつが唐突にしゃべり出した。
「 うん」
「見たいんだ」
「は?」
「高いところから」
「何を」
「世界を」
また訳の分からないことを言う。
「ここじゃだめなの?」
「うん」
「何で」
「分からない」
「分からないのに分かるの?」
「うん」
「はあ…」
まったく意味不明。でも、
「そろそろ帰る?」
「うん」
これからもこんな感じだろう。