「ふんわぁあ〜」

本当に大きなあくびとのびだ。
身長が2センチくらい伸びそう。

「おそよう」

食卓についた彼女に、もうお決まりになりつつある朝の挨拶をする。

「別におそくないよ。ほら、まだ8時」

壁掛け時計を示す彼女の髪は寝癖だらけだ。

「僕が起きてから2時間半たってるけどね」

会話しながら、朝御飯の用意をしていく。

「ジジイ?」

彼女は目をこすりながら言う。

「早起きは三文の得」

サラダ用の取り皿とフォークとソースを食卓へと運びながら言えば、彼女が直ぐ様リアクションをとる。

「うわ。ジジイ決定だ」

彼女は髪を手で鋤いて立ち上がり、飲み物の準備をはじめる。
いつも思うが、一度席に着くのは物凄く無駄な行為じゃないだろうか。

とりあえず、今朝の彼女はジジイネタが大好きなようだ。

「なんでそれだけでジジイなのかなあ…」

焼けた目玉焼きとベーコンとソーセージを皿に乗せる。
彼女は上機嫌で、コーヒーが抽出されるのを眺めている。

「いや、それ以外にも色々要因はあるよ?メガネだし、堅実派だし、呂律回んないし…」

彼女は指を折りながらそう言う。
どれもジジイ要素とは思えない。
僕はため息を吐いて区切りをつけ、ジジイネタから離れる。

「…今日の予定は?」

「んー…ごろごろー」

「そっか…じゃあ僕は練習かなー」

副業の副業、趣味のギター。

「励めよ、青年」

「ジジイって言ったり青年って言ったり…」

「万物は変化するものなのだよ、少年」

ふふん、と茶目っ気たっぷりに笑う彼女。エクボが出来ている。

「あれ?…僕、退化してる?」

僕がそう言うと、今度は小さく含むような笑いを顔に浮かべながら席に着く彼女。
僕もサラダボウルと目玉焼きの皿を持って席に着く。

「さて、食べようか?」

そう言う彼女の頭にはまだ寝癖が楽しげに立っている。

「うん。その台詞、大抵は準備した側が言うんだけどね」

「準備…したよ?」

マグカップを持ち上げてみせる彼女。
本当に、楽しくなってくるくらいに呆れる。

「はいはいそうですねー、じゃーいただきますしましょーか?」

「うん」

「「いただきます」」

そう言ったあとマグカップを手にとれば、メガネがくもってしまった。
僕は仕方なく、メガネをはずしてコーヒーを飲む。

小さなテーブルの向こうで彼女はくすりと笑って、ベーコンをおいしそうにほお張った。