「次のお題はじゃあー、眼鏡にしましょうかー」 退屈そうな面持ちで、自分の眼鏡をいじりまわしながら部長は告げる。 「期限は一ヵ月後ですねー。よろしくー。じゃあ今日の図書紹介ー……比奈森の番か。」 「はぁい。」 「……よーし、じゃあ今日は終わりー。お前ら締め切りは守れよー。」 そう言ってさっさと席を立ってしまう。 帰り道、私と百合香はから揚げを食べながら歩いていた。 「今日もやる気無かったねぇ部長…」 「ねー。ちゃんと起きてたの、図書紹介の時だけだよね。」 「うん、あとは眼鏡すらかけてなかったよね…」 「だって眼鏡って頭痛くなるじゃん。」 言葉が降ってくる。同時に背後から腕が伸びてきて、ひょい、とから揚げを取っていった。 「あ、最後の一個…」 「じゃあなんで普段は眼鏡かけてるんですか?」 百合香は突然の部長の登場に動じる様子もなく質問をしている。 「ん〜寝ないため?っていうか、眼鏡あったほうが俺かっこいいから。」 「そうですか…。」 部活のこと以外で部長に質問をするときは、まともな返事を期待してはいけない。 これを忘れていた。 いつもどこか妙な返答をしてくるのだ、彼は。 「うん、で、富岡。これ、兄貴に渡して。よろしく〜」 「はぁい」 「頼んだー。じゃあなー」 私にファイルを渡すと、部長は私達と反対方向に歩いていってしまった。 「先輩の、原稿…?」 「うん、」 「読みたい!今からトミの家行っていい?」 「いいよー。」 家につき、私達は机の上に先輩の原稿を並べた。 小学生が読書感想文に使うような原稿用紙。 ギターを弾く少年と、それを聞く少女の話。 少女はしかし、遠いところへ行くことになってしまう。 少年は、僕の事を忘れないで、と、ひとつの眼鏡を少女に手渡す―――…… え? 「、眼鏡?なんで?」 「わかんない………そういえば、先輩の小説にはいつも眼鏡が、」 「それが代々の文芸部部長のしきたりなんだよ。」 お茶を持ってきてくれたらしいお兄ちゃんが口を挟んできた。 「お兄ちゃん。」 「そろそろ、眼鏡ってお題が出たんじゃないか?」 「出た。」 「それ、次の部長選びだよ。」 「は?」 久しぶりだな、と百合香の頭をくしゃくしゃにする。 百合香はほんのり頬を染めたりしている。 「うちの部は、代々“より不自然に眼鏡を物語の中に組み入れたやつ”が部長になるんだよ。」 「なんじゃそら…」 「じゃあこれ、先輩が去年書いたやつ…?」 「ああ。文芸部、いろいろ探せばもっと眼鏡出てくるぞ。俺がいたころは、眼鏡の肖像画があった。」 「は…?肖像画?」 「トミ、明日探してみようよ」 次の日、部室をあさると、資料庫のいたるところから眼鏡に関係するものが出てきた。