私は小さいころ、突然メガネに憧れるようになった。それは多分……メガネ屋さ んのお兄さんがかっこよかったから。 いらっしゃいませー 目が悪いお父さんは、何年かに一回メガネを買いに行く。そういうときは決まっ て私もついていった。でも、私はメガネを掛けるほど目は悪くなかったし、興味 なんて全く無かった。ただ、ついて行ってただけ。 どのようなものをお探しですか? そう言って現れたのは黒縁メガネにスーツのお兄さん。多分20代。……うん、か っこいい。 えーと、これみたいなのがいいんですけど…… かしこまりました。それなら、これはいかがでしょう? てきぱきとメガネを選んでいくお兄さん。かっこいい。 どう? お父さんに聞かれたけど、どうでも良かったから 別に。 って答えたら 退屈かな? ってお兄さんが話かけてくれた。優しいな。 これにします。 お父さんがそう言うから かしこまりました。 お兄さん、お店の奥の方へ行っちゃった。ちょっと残念。 帰るときに、 ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております。 って言った後に、 バイバーイ 手を振ってくれたから、私も バイバーイ 手を振った。 帰り道、お父さんに 私もメガネほしい って言ったら まだ必要ないだろ って言われた。目が悪くならないといけないらしい。 あれから、目が悪くなることをしてきた。暗いところで本読んだり、テレビを近 くで観たり、姿勢悪くして勉強したり。その成果が表れたのか、着実に私の目は 悪くなり、学校の視力検査でDだった。お母さんに見せたら眼科に行かなきゃだ めだって言われて、お医者さんから念願の処方箋ゲット! そして、 いらっしゃいませー あのお兄さんは居なかった。代わりにお姉さんが出てきた。でも、お兄さんのメ ガネは覚えてる。 どのようなものをお探しですか? あの、黒くて、ちょっと細くて、ちょっと角張ってて… それなら、これはいかがでしょう? うーん、もうちょっとフレームが細い方が… 明確なイメージがあるんですか? あ、はい。昔ここで働いてたお兄さんがしていたものと同じのを探してるんで す。 へぇ〜私はまだ日が浅いのでよく分からないですけど… 大丈夫です!ばっちり覚えてますから。えーと、あ、これ、これです。良かっ たー見つかって。 ふーん これが似合う人だったんですか……じゃあ、こちらの方へ 話聞いたりしてたら、 店長、お久しぶりです ……!! この声って……振り返ってみると やっぱりあのお兄さん!!ちょっと老けたけど。なんか雰囲気違うなーって思った ら、メガネが変わってた。あの黒縁メガネの方が良かったんだけど。 もしかして、あの人? お姉さんが聞いてきた。 はい。 すると あのー お姉さんが、店長らしき人と話しているお兄さんに声をかけ、 あの女の子が、数年前ここで働いていたあなたのメガネ姿がとても良かったっ て…… へ? 彼女が今日選んだ黒縁メガネも、そのときしてたものらしいんですけど… そう言われて私はメガネをお兄さんに渡した。 あぁ、そう言えばこんなのもしてたかも… そんなに古くからうちのお店を使ってくれてるの? 店長さんらしき人が話しかけてきた。 はい。父親もここで買うんで。 そうか――このお兄ちゃん、またここで働くようになったんだよ。 えっ? 言ってることを理解するのにちょっと時間かかったけど、解ったときにはもう笑 顔だった。 そしたら、お兄さんのこと、また見られるようになるんですね? うん。これからまた、よろしくお願いします。お父様にもよろしくお伝え下さ い。また来てね。 帰るときに、あのお兄さんが バイバーイ 手を振ってくれたから、私も バイバーイ 手を振った。 きっとまた、絶対に来る気がする。