優しさと言う名の嘘を、僕は吐いた



その嘘は優しさ。


その嘘によって、今、彼女は笑っている。

犬とじゃれあい、春の陽気に照らされて、幸せそうに笑っている。


それでも、僕が嘘を吐いたという事実は変わらず、

嘘によって笑っている彼女は幸せなのだろうか。
嘘がばれたときに彼女はどんな顔をするのだろうか。
そのことだけが頭のなかをぐるぐるとめぐる。



「ねえ、遊ぼ!」

気づけば、目の前にはまだ幼い彼女の顔。

僕は、笑顔で答えた。

そっと握った彼女の小さな手は、
同年代の女の子に比べるとずっと細くて、


 
生きる気力にあふれていた。

ベンチにすわって、犬のハルとあそんでる私をみてるお兄ちゃん。




「もう、思うぞんぶんにあそんでいいんだよ」

おととい、お兄ちゃんはそう言って下のくちびるをなめた。

お兄ちゃんが下のくちびるをなめるのは、ウソをつくとき。

「ウソだ!!」

そんなふうには叫べなかった。

泣きそうなお兄ちゃんの顔を見たときに、
ああ、これは私のためなんだなって思った。

だから、私はお兄ちゃんの言ったことは本当だと思ってるように、ウソをついた。




「ねえ、あそぼ!」

私はベンチで悲しそうな顔をしてたお兄ちゃんにそう言った。

お兄ちゃんは、ハルがぬれた時にするように頭をふったあと、笑って、私の手をにぎってくれた。



お兄ちゃんの手は、大きくてあったかくて、


少しふるえてた。




やさしさというなのウソを、わたしはついた