──決めた。彼を自由にするためには──

  † † †

「ね、別れてくれない?」
私は、雪が積もった公園に地夜を呼び出して告げた。彼は驚くでもなく、悲しむでもなく、ただ静かに私の瞳を見つめてくる。
「あんたと一緒にいても、楽しくないのよ。飽きちゃったの」
「…僕のこと、きらい?」
私の瞳が揺れる。
「僕はの玖白こと、すきだよ」
…ずるい。私は零れそうな涙を見られたくなくて、地夜に背を向けた。
「…あんたなんか、だいっきらいよ」
絞り出すようにそう言って、走り出そうとした。が、後ろからふわりと抱きしめられる。
「…ねぇ、うそって2種類あるの、知ってる?」
「…」
何も言わない私に構わず地夜は続ける。
「ひとを騙す為につくうそと、ひとを傷つけたくなくてつくうそ、だよ」
「…」
一言でも喋ったら涙が零れてしまいそうで、つよく唇をかむ。
「玖白は僕に、優しさという名のうそをついたつもり?でもそれは、僕を傷つけるだけのことばだよ」
私は思わず振り返って叫んだ。涙が頬を伝う。
「地夜に何がわかるのよっ!私がどんな思いで言ったのか、地夜は知らないでしょっ!?」
そのことばを聞いて、地夜はほっとしたように微笑んだ。
「やっと名前、呼んでくれた」
「…は?」
「玖白はね、うそをつくとき絶対に僕の名前呼ばないんだ。…だから、今のは本音でしょう?」
私は肩から力が抜けるのを感じた。そして、ぽつぽつと話しはじめる。
「…私…地夜の全部がほしいの…地夜が他の女の子と一緒にいるところ見ると、その子のこと…殺したくなるの…歪んでるでしょ?…私は地夜の重荷にしかなれないの…だから…」
「そんなこと?」
彼は少し怒ったような口調で言い捨てる。
「玖白も、僕の気持ち知らないでしょう。いつだって君に近付く奴らを殺してしまいたいと思ってた。僕だって君の世界を僕の色だけに染めてしまいたいんだ」
今度は前からぎゅっと抱きしめられた。自然と私は彼の胸に顔をうずめる。
「結局私たち、似た者どうしだったのね」
「二人で堕ちるなら、それも悪くないんじゃない?」
「そうね…」

  † † †

──もう離してなんてあげない──