夏の星座にぶら下がって〜♪

携帯が着信を告げる。
私は慌てて携帯を探す。

見つからない。

ミニサボテンの裏?
CDラックの上?
いちごちょこのお菓子の裏?
ビタースイートチョコの下に埋もれてるのかしら?


あった。


誕生日に彼がくれた、かわいいくまたちが抱いていた。
リリーからの着信。困った、彼女は気が短いんだっけ。

『ねえちょっと果歩聞いて!!もう!私のときめきを!!!!』
「はいはい…何?聞かせて?」
よかった、そんなに怒ってないみたい。
彼女のマシンガントークを聞きながら、窓際に置いた何も棲んでいない水槽を見つめる。


天気職人さんの特注キャンパス。
本物の空をパレットにして、水面に絵を描く。
朱いオレンジ色が綺麗。


『……で、今度のデート、どこ行ったらいいと思う?』
話題はいつの間にか、次のデートの話になってるみたい。
「うーん、プラネタリウムにでも行ったら?」
私が行きたいところを言ってみる。
本当は天体観測に行きたいけれど、この時期に行くのは寒すぎる。
『うーん、そうねぇ…じゃ、そうする!ありがとう果歩!やっぱ持つべきものは女友達!』
「はいはい、」

キャンパスから目をうつして、本物の空へ。
ホウキ雲がなんともいえない模様を作り出している。

『ねえ?あれから会った?理人さんに』
「あわないよ?どうして?」
彼女の好きな話題。理人さんの話。
『だって好きなんでしょ?』
「別に好きじゃないってば。」

最後に理人さんに会ったのは、まだクリスマスにもなっていない頃。
気付かれないように横顔をちらと見ただけ。
もう一度出会えたら。そう思うけれど、正直どちらでも良い。

『あ〜〜電池がっ!!じゃあね、きる!ばいばい!』
「はいはい、」
苦笑して電話を切る。
彼女の電話はいつも唐突に終わる。
私は冷たい手をこすり合わせながら、“DIARY”と書かれた本に文字を記す。

薄い文字で、物語をつづる。
小さな男の子の話。
彼には、未来がある。
私は、彼に素晴らしき人生を送らせてやるつもりでいる。



私の休日はこれでおしまい。
明日は風が強くなるらしいけど、包み紙がちゃっちいあのお店で指輪を買うことにしよう。