お前も急に来んなよ。 暇って訳じゃあないんだろ? …まあいいや、とりあえず、俺もう仕事いくから。 ああ、じゃあな。気をつけて帰れよ。 もしもしお母さん? 私。うん、今から帰るね、うん。 そっち着くのは明日の朝。 ん?……うん、元気そうだったよ。 もう、すっかり東京に馴染んじゃってるみたいだった。 …あはは、そうだね…。 あ、そうだ。お土産何がいい?…うんうん。分かった買って行くね。 うん、分かってる。 じゃあ、ばいばい。 (運、悪いなぁ) 夜行バスの前の席には、馬鹿そうな学生の団体様。 音漏れさせようと思って、音量の+ボタンを連打したけど、途中で、耳が痛いのとイヤホンじゃ殆んど意味がないのに気付いて止めた。 効きすぎた暖房でぼーっとした頭を窓ガラスにもたれかけさせれば、こめかみにひんやりとした冷たさを感じる。 窓の外、道路の両脇のオレンジ色の灯りは永遠に続いているかも、と思う私。 浜松をこえた辺りから、雨が降りはじめた。 水滴がガラスに横縞を描く。 MP3からはずっと同じ曲が流れている。 セールのときにデザインが気に入って買ったダウンジャケットは、もの凄く軽かったけど、中がスカスカで温かくなかった。 雨の横縞に涙の縦縞が加わり、格子模様。