―なんでかなぁ。
冬の寒空に冷えた体に缶コーヒーが染みる。考えてみれば確かに色々やったけど。
浮気とか、万引きとか、最終的にはクスリまで。
その度に泣いたけど、それでも僕を突き放したりしなかったのに。
冷たい風が吹いて赤くなった頬が痛い。
行く当てもなくて、僕は公園のベンチに座り込んだ。


『死んじゃおっか』
独り言のようにそう言った僕を彼女は泣き腫らした目で見上げた。意味がわからないらしい。
『俺さ、お前泣かせないこと、できないと思うんだよね』
『え…』
掠れた声。綺麗。
『だから、死んだら泣かせなくて済むし。ずっと一緒だなー…って』
彼女の目が歪む。
―あ、泣く。
そう思った瞬間に彼女は思いっきり僕をぶん殴った。


「…なんで怒ったんだろ」
我ながら名案だと思ったのに。
何がいけなかったのか。クスリにやられた頭じゃちっともわからない。携帯を見ると、いつもならとっくに何かしら連絡がある時間だ。
「…たまには俺から電話しろってことかな」
そう言えば僕は次からはしないからとかそんな頼りない口約束ばかりでほとんど謝ったこともない。
残った缶コーヒーを仰いで飲み干すと、ふとゴミ箱が目に入った。
「…よっし、この缶が入ったら、電話する」
そう一人で呟く僕はなんだか危ない奴のようだ。いや、クスリやってる時点で危ないか。まぁどうでもいいけど。
二、三回肩慣らしするとやりすぎなくらい大きく振りかぶって、第一球。
「てやっ」
―カン、
名前通りの音がしたのは捨てられる身の最後の自己主張なんだろうか。まぁ、要するに縁に当たって跳ね返ったわけで。
「うっそマジで」
これもひょっとしてクスリのせいだったりしちゃったりすんのかな。やっぱやんなきゃ良かったかも。
「あー…」
どうしようか。これじゃ謝れない。しょうがないからとぼとぼ歩いて缶を拾い上げると再び振りかぶって、超至近距離からもう一回。
―ガシャン。
当たり前だが酷い音をたてて入る。一仕事終えたように僕は大きく息を吹いた。
「電話すっか…」
携帯を開く。通話ボタンを押して、コール音が鳴り始める。
一回。
二回。
三回。
―ガチャ。
「ごめん!!」
開口一番。
風が止んだ冬の夜の空気が不思議なほどほんのり暖かかった。