初めて学校の帰りに、二人だけで寄り道をした。 普通のファーストフード店なんだけど、俺がここを好きな理由は、ジュースを入れる容器にあった。 「な?!言ったとおり透明なプラスチックだろ?」 机に置かれたコップに入っているソーダ水が、しゅわしゅわと揺れる。 その向こうに、ふわりと笑った晃がいた。 「綺麗だな。」 午後の優しい日差しによく似合う、やわらかいブラウンの髪を後ろで一つに束ねた晃は、所々落ちた前髪が眼鏡にかかって、少し邪魔そうにしていた。 「ちょっと動かないで。」 「ん?」 鞄から、今自分が付けているのと同じヘアピンを取り出す。 手を伸ばして、髪を左側にまとめてとめてやった。 くすぐったそうに目を閉じた晃が、どうしてかすごく可愛く見えた。 「…はい、もういいよ。」 もうちょっとだけ長く見ていたくて、わざと少し時間をおいてから声をかけた。 「何これ。…ヘアピン?」 「そう。俺のと一緒。」 鏡を渡して、自分の髪を指差した。 ちらりと鏡を見て、すぐに俺に視線を戻した晃は「本当だ。」と言って、目を細めた。 それはどこにでもあるような黒いヘアピンだったけれど、すごく嬉しそうにしてくれた。 「可愛いだろ。」 「まぁな。」 不器用にとめられた前髪を左手で触りながら笑う晃は、もう片方の手でそっと俺の手を捕まえた。 「あ、晃…?」 「ありがとう。」 かぁっと頬が紅くなるのを感じて、慌てて手を離した。 晃がへらへらと笑うのを見たら、それが何だか悔しくて、下を向いてソーダ水に口をつけた。 「晃はずるいよ。」 「何が?」 「いつもは普通なのに、いきなりすごくかっこよくなるんだもん。」 ふと、昨日の夜、全く同じやりとりを電話ごしにしたような気がした。 「そんなことないよ。」 晃の返事もやっぱり昨日と同じで、二人してくすりと笑った。 漠然とだけど、明日も明後日も、二人でこうして笑っているところを想像してみた。 時間が止まっても、二人でいれば、それだけで世界は動くような気がした。