ガラス越しに、窓の外を外を見る。
壁が薄いせいで、玄関の話し声が聞こえた。
 
「いやぁ、すみません。ちょっと忘れちゃってて。」
「しっかりして下さいよ。あと、煙草。気を付けて下さいね。」
「はは、すみません。では。」
 
扉を閉める音と、鍵をかける音。
そして、理が歩く音。
 
「また家賃忘れたの。」
「うん、いつも気付いたら過ぎてるんだよなぁ。」
 
いつの間に火を点けたのか、理の手には白い煙を纏った煙草があった。
 
「大家さんが本当に怒ったら、どうするの。」
「怒られないようにするから平気。」
 
美味しそうに煙草を吸っている理は、天井に溜まった煙を愛しそうに眺めていた。
今の彼には、きっとあいつしか見えていないんだろう。
 
さみしくなんか、なかった。
 
窓を開けて、枠に腰掛けた。
雲を眺めながら、冷たい空気で肺を満たす。
それでも地面はやっぱりすぐ近くにあって、相変わらずそこはスリルのかけらも無い場所だった。