節々とした幹に手を当てて鼓動を確かめる。
 
涙は出なかった。
 
ただ、目の前に広がる閑とした景色に物悲しさを感じる。
微かな風が草原を撫でて、そのたびに揺れてしまう命。
 
(どうして、魂は―)
 
なくならないで、ずっとここにいて。
そう、願ったのに。
 
(お願い、)
 
連れてかないで。
――風が吹いて、攫ってゆく。
 
 
『…―木の葉はね、枯れて茶色になってもいつか瑞々しい緑になって帰ってくるの』
 
風が吹いて、飛ばしてくる。
 
『茶色はね、だからけっして終わりの色じゃない。全ては大地と同化するために、茶色になるのよ――…』
 
思い出す、思い出す。
 
『お母さんもそう』
 
 
 
風が、吹き荒れる。
涙の粒が飛んでいった。
 
茶色の幹に包まれてもう少し泣いたら、お家に帰ろう。
 
少女のおさげは小さく揺れた。