──オレは、自分の顔が大嫌いだった── † † † 「ねぇねぇ見てあれ」 「うわー染めてんのかな?まだ同い年くらいなのに」 …ジロッ オレはこっちを見てこそこそ話している女子高生たちを睨んだ。 「い、行こっ」 気まずくなったのか、そいつらはそくさと逃げていく。ざまーみろ。 彼女らが注目していたのは、オレの髪だ。 生まれつき色素の薄い髪は、顔は純日本人なのとまだ十五歳という年齢が相まって非常に目立つ。 オレは、自分の顔も髪も大っ嫌いだ。教師や先輩に目つけられるし、同級生は近づいてこない。 …自分の居場所が、見つからない。 「"オレ"は…何処にいるんだろう…」 ──どんっ 「きゃんっ」 上を向いてぼけーっとしながら歩いていたら、誰かにぶつかった。 「ごごごごめんなさい!」 同じ学校の制服を着た、ちっさな女の子だった。尻餅をついてしまっている。 「いや、こっちこそ。立てるか?」 オレはその女の子に手を差し出した。 彼女は初めきょとんとしていたが、掴まれという意味なのだと悟ると控えめにオレの手を握った。 「ありがとうございます!」 「怪我ないよな?ぼーっとしてて悪かった」 オレが謝ると、彼女は首を横にぶんぶん振った。 「いえ、私も貴方の髪に見惚れてしまって、そのまま突っ込んでしまいして…」 彼女はずかしそうに頬をかいている。 「オレの髪…?」 「あっ、いや、なんていうか、はちみつみたいで美味しそうな色だなぁって…」 慌てたように体の横でわたわたと腕を動かす様がなんだか可愛くて、思わず笑う。 「美味しそうって…はははっ。あんただってそれ、レモンティー色だろ?美味そうじゃん」 オレは彼女の髪を一房掬う。黄色がかった、明るく深い茶色だった。 「でしょう?!私も気に入っているんです、この髪!そりゃあみんなと少し違うけど、誰だって何かしらみんな と違うんだもの。きちんと話せば"きれいだね"って言ってくれます」 目から鱗って、こんな感じかな… 今までオレは、自分のことしか考えてなくて。 周りがオレに良い印象もってなくても、もたせてやればいい。簡単なことだったのに。 「オレって馬鹿だなぁ…」 「…?」 何より、彼女が"美味しそう"って言ってくれたこの髪なら、好きになれそうな気がした。 「んーこっちの話。ありがとう、気づかせてくれて」 オレはにっこり笑う。こんな風に笑うの、久しぶりだ。 女の子は不思議そうにしていたが、オレにつられてにこっと笑った。 「貴方は、笑っていた方がすてきです」 「えっ…えと、その…ありが、とう?」 急にそんなこと言われると、咄嗟に反応できない。顔に熱が集中してくるのがわかった。 「顔赤いですよ?大丈夫ですか?」 「いや、気のせいだから…ってそれよりもうこんな時間!入学式遅刻する!」 「きゃあ本当だーっ急がなきゃっ」 気づけばもうかなりやばい時間で、オレは彼女の手をとって走り出す。 「ほら、行くぞ!」 「はい〜っ」 † † † 同じ新入生かと思っていた彼女が実は二年生で、彼女もオレのことを三年生だと思っていたのがわかるのは、も う少し先の話…