「緑茶うま。」

竜胆は独り呟いた。

「ってかな〜んでまだ誰もこないのよ!集合時間は30分前でしょう!」

そう言ってまた独り緑茶を啜る。
独り言は寂しい事とは思っていても、やっぱり寂しいから言ってしまうものだなあ、と思う。

「あ、空になっちゃった。」

急須をひっくり返しても、もうあの緑色の液体は出てこない。
面倒臭いと思いつつ、席を立つ。
またお湯を沸かさなければいけないのか、と思うと憂鬱になった。

「世間はクリスマスだっていうのにね。我が弟はサーカスの練習だし、私には彼氏もいないしねぇ。」

言ってから憂鬱になるのはそのせいだと気付いた。
気付いた所でどうなる訳でもないし、解決策が出てくる訳でもない。

「……対処療法なら寝て過ごすことかしら。」

そう呟いてから、自分が横になるには少し小さいソファに横になった。
背中を支えるしっかりとした感触と、日々の疲れのせいか緩やかな睡魔に囚われていく。

パンッ!

まどろみのなか、その銃声のような軽い音に目を醒ました。
ハッとして辺りを見回すと、煙と、三角錐と、色鮮やかな紙と、よく見知った人達がいた。

「HAPPY BIRTHDAY TO YOU!」
「仕事っ!?」

慌てて上半身を起こすと、鈍い音が響いた。
額がじんじんする。

「痛いですよ、竜胆先生。」

苦笑いをした桔梗がいた。
桔梗も額を押さえている。
笑い声も聞こえた。
槐に、教授に、鈴蘭。
はっきりと分かった。
私の大切な人達がここにいる。
そのことがやけに幸福に思えた。

「今日は姐さんの誕生日だよ、仕事じゃなくて。」
「そしてクリスマスだ。キリストが生まれた事を祝う日だが、生憎私はクリスチャンではないのでな。キリストよりもおまえが生まれた事の方が重要だ。」
「……仕事よりも?」
「今日だけはな。」

クスクスと笑う声が空気を支配する。
それはとても心地良いもので、例えようもなくて、こんなに世界は素晴らしいのかと思った。

「さて、ケーキを買ってきたんです。竜胆先生、私達に切り分けて下さい。」

そう言って取り出されたケーキは、純粋な赤が栄える白で、美しくて、ナイフを入れてはいけないような気がした。
そこで、話題を反らしてみる。

「桔梗センセ、今日は撫子と一緒に過ごそうと思ってたんじゃないんですか?」


その後、やかんのお湯が冷めたその部屋では、ばつが悪そうにケーキを食べる桔梗と、その様子を見てクスクスやる竜胆と仲間たちがいた。