砂の城をつくっては波に消され、またつくってはくずされる。
もう何度繰り返したのだろうか、さらさらと流される砂を見て、啓太は考えていた。
なんと儚いことか。
何回つくっても、波が押し寄せなくならないかぎり城は完成しない。
僕一人だからだろうか。誰かが居れば、くずれないのか。
それとも波がこなくなればいいのか。
何もかも動かなければいいのに、とふと思う。
いや、でもそんなのはいやだ。ずっと一人だった。一人はさびしい。
誰か、僕の名前を呼んで、
―――啓太。
えっ?
―――啓太。
声が聞こえる?僕を呼んでいる?
―――ねぇ、聞こえてるの?
応えなくちゃ、この声に応えなくちゃ、
「だ、誰?」
―――あなたは私を知っているわ。
「え?」
―――そして私もあなたを知っている。
「どういうこと!?僕は君を知らない。」
―――あなた、自分の記憶が失われていることに気づいていた?
   砂の城は、気を紛らわせていただけ。

そうだった、僕は知っている。
ねぇ、僕が君の名前を呼んだら、君は返事をしてくれるかな。