「あ、そういえばお前、3つ下の弟いんだっけ?」

隣で肉まんにかぶり付いていた先輩が言った。

「はい。そうですけど?」

私はおでんの大根をふーふーと冷ましながら答えた。

「んじゃあ、受験だろ?相当ピリピリしてんべ?」

「それなら未だ良いんですけどね…」

「ん、なに、今にも包丁取り出しそうか?」

もぐもぐと口のなかに肉まんを残したまま喋る先輩。

「いえ、逆に上機嫌なんです」

そう言って私は大根を口のなかにいれた。

「?」

「最近、彼女が出来たみたいなんですよ。
 それで、家で口を開けば、のろけ話ばっかで…」

「はは!んじゃあ、俺んときと一緒だわ。
 俺もお前と付き合いはじめたとき、ちょうど就活時期だろ?
 けど、そんなことなんか全然考えられなかったからな!」


「ちくわ食べます?」

ちくわのあなの向こうに先輩が見える。

「ん、なに、照れてんのか?」

「照れてません!ほら、食べますか?食べませんか?」

「もちろん食う」

「じゃあ私が食べます」

そう言ってちくわにかぶり付いたら、熱くてびっくりした。


「お前、時々可愛いよな」

涙目でひーひー言いながら火傷した舌を出していた私を見て先輩が言った。

「時々ってなんですか。時々って」

「事実じゃね?」

「もういいです」

今度ははんぺんにかぶり付く。すごく、熱かった。


「間抜けだな」

涙を流し声も出せないくらいに火傷した舌を出した私を見て先輩が言った。

「いふぁひふぇふぁはふぁいふふぁひふふぇふふぁ」

「舌出しながら喋んな」

「うるさいですよ」

私はヤケになって先輩の肉まんを奪ってかぶり付いた。
肉まんは熱くなかったけど、火傷した舌に優しくしみた。


私も、今、就活のこと考えられないなんて、
先輩のことで頭いっぱいだなんて、

絶対に言うもんか。