目が醒めたらまた朝だった。彼は朝が嫌いだった。何もしたくないから。仕事に 行かなければならないから。でも、もし朝が無くても仕事に行くだろう。彼は諦 めて体を起こす。 「頑張れ、自分」 この部屋には彼1人だから、彼を気遣い励ますのは彼自身しか居ない。もう充分 結婚していてもおかしくない年だったが、彼には興味が無く未だに独身だった。 独り言がもう恥ずかしくはなかった。逆に、話さなければ声の出し方を忘れそう だった。 「また痩せた」 ベルトの穴が一つずれた。いったいウエストはどこまで細くなるのだろう。食欲 が無く、体重は減る一方だった。 「このまま死んだりして。ま、有り得ないことじゃないか。別に良いし。」 こんな風に支度をしていたので、 「朝飯抜きだ」 これで何日目だろう。場合によっては昼飯も抜きになり、夕飯は外かコンビニ弁 当。彼の体調が悪いのは当たり前だった。 「そろそろ行くか」 玄関に置いたままだった鞄を持ち、家を跡にする。 「行って来まーす」 誰も居ない部屋に彼は挨拶をした。 「おはようございます」 「おはよう」 彼は普通のサラリーマンだ。仕事を片付けるのは早い方だが、家に持ち帰ったり 期限を守らないのは嫌なので残業することもしばしばあった。そんな勤務態度が 上司に気に入られたのだが、社交性はあまり無く並みの出世しかしていなかった 。だが、彼自身も特に昇進したいとは思わないし給料も申し分なかったので、今 日までそのままだったということだ。 今日は仕事が早く終わった。呑みに行こうと誘われたが疲れるだけなので断った 。何もすることが無く寝ようかとも思ったが折角なのでレンタルビデオ屋に行く 。 取り敢えず新作を借りた。アメリカの映画だ。2泊3日ギリギリ借りたが、多分 返すのを忘れて延滞するだろう。 「観るかどうかさえ分からない」 その分金はムダになるが、彼にとっては端金に過ぎない。 そのままコンビニに寄って水を買い帰った。 部屋に帰って来た途端、どっと疲れが押し寄せる。彼はソファーに倒れた。 目が醒めたら、また朝だった。今日もいつもと変わらない一日だろう。