雪だるま 「おねえちゃん!」 茂みの向こうから声がする。近所の女の子だ。 「こんにちはえりちゃん。どうしたの?」 「あのね、これ、あげる!」 差し出されたピンクの手の上にのっていたのは、小さな雪だるま。 マフラーの代わりに、四葉のクローバーがまいてあった。 「わ、かわいい! ありがとう、私がもらっちゃっていいの?」 「うん!…本当はね、わたしがつくったんじゃないの。」 彼女は声を潜めて内緒話のポーズをする。 「知らないお兄さんがね、『あそこのお姉ちゃんに渡してくれる?』って。」 「へえー、そっか、ありがとう。じゃあ玄関に飾っておこうか。」 出入りの邪魔にならないところに雪だるまをおく。 「えりちゃん、ココア飲む?」 「うん!おじゃまします!」 パタパタと体についた雪を落として、お行儀良く靴を並べたのを見届けてから、 「そこのお兄さんもどうぞー。寒いでしょ、そこ。」 姿は見えないけれど、きっとそこで眼鏡を曇らせているはず。